ダイアモンドの4C「カラー」こぼれ話

それでは前回に引き続き、カラーについて書き進めていこうと思います。

 

前回は、カラーのグレードや、マスターストーンについて解説致しました。

今回は、選別するときの環境や、ABCをグレードに使わない理由についてなどを、説明して行こうと思います。

 

いつもよりも長めになると思いますが、気軽な気持ちで読んでいければと思います。

 

それから今書いている基準のようなものなどは、
基本的にGIA基準で書いています。
 
他にもいろいろな鑑定機関があるのですが、GIAの基準が世界基準といっていいからです。
 
それでは、始めて行きたいと思います!

カラーグレーディングの環境について

前回の記事で記載したことで、環境によって色の見え方が変わるお話しをしました。
ダイアモンドでのカラーグレーディングや、選別をする際には基準があります。
 
周囲の環境として壁や家具、什器などは、色のついていないもので、白もしくはグレーのものが良いとされています。
 
ダイアは、色々な光を取りこみ反射するため、反射する色に色が混ざっていると、
正確なグレーディングが出来ないのです。
例えば、壁が赤や黄色、緑など、色が付いた壁だと想像していただくと、
ダイアに周囲の色が反射してしまうため、中々難しいのがお分かりいただけるのではないでしょうか?
 
絵の具で例えるなら、白い絵の具に、白い絵の具を足しても色は変わりませんよね?
白い絵の具に、茶色や黄色、青などが混ざると、白だとわかりづらくなってしまう感じです。
 
ちなみに、僕が小さい頃に
赤や青など、七色の色の絵の具を混ぜたら、メチャクチャきれいな色が出来上がるのではないかと思い、
混ぜまくったら、きれいとは真逆の色が出来あがりましたよ。
そりゃそうですよね…。
 
話を環境のことに戻します。
昔は理想的な光として、北半球に住んでいる場合
北向きの窓から差し込む昼の光がグレーディングに思想的な光源とされていました。
けれどこれって、天気が悪かったりしたらアウトですよね?笑
 
なので、現在では昼光相当の蛍光灯を使用しています。
さらに言うと、ちゃんとしたダイアモンドを取り扱う会社は、
身に着ける衣服の色も黄色っぽいものは着ないなど、気を付けています。
 
また、もうひとつ見た目を変えてしまう要因があります。
それは、ダイアモンドを指輪などにはめ込んでしまったりした場合。
宝飾品の状態になってしまっているものです。
 
イエローゴールドなどの金属でダイアモンドを留めた際、
ダイアモンドにイエローやブラウンの色が薄っすら入っていても
小さめのダイアモンドであると、ほぼ無色に見えてしまいます。
もちろん、優秀なグレーダーであればわかると思いますが、
普通の方にはわかりづらいと思います。
 
逆に、ホワイトメタル(プラチナやホワイトゴールドなど)で留める場合、
色がついている場合、分かり易くなり、ダイアの色が際立ちます。
 
好みやダイアモンドをどう見せたいかなどによって、地金を選定することも
ひとつ頭の隅にでも入れておいていただくと良いかもしれません。

蛍光性

天然の多くのダイアモンドは、蛍光性をもっています。
蛍光性は、紫外線に当たると「蛍光」という光を放つものの性質です。
 
宝石用のダイアモンドの約35%は、蛍光性を持つと言われており、
一般的に、光る色は青色が多いです。
他にも、黄色や白色、オレンジなども存在しています。
 
青い蛍光である「ストロングブルー」、通称ストブルと言われるのですが、
ストブルのダイアモンドは、仮にダイアモンドに黄色味がある場合
お互いの色を打ち消しあう傾向があります。
そのため、ダイアモンド本来の色がわかりづらくなってしまい、
敬遠される場合もあります。
 
しかし、蛍光性のダイアモンドが好きな人もおり、
例えば、ナイトクラブなどに行くとブラックライトがあるのですが、
そこでダイアモンドが青などに光るため、あえてストブルのダイアモンドなどを使用したがる人も居ます。
 
要は、どの基準にも言えますが、
買い手の方が気に入ったものをお選び頂くことが最良だと考えております。
もちろん、売り手としては、しっかりとそれぞれのダイアモンドの特徴をお伝えすることが重要であり、責務だと考えております。

ABCを使わない理由

Dから始まる理由について。
GIAがカラーグレーディングのシステムを開発する前は、色々な言われ方をしていました。
0、1、2、3と数字を使う人や、ローマ数字のI、II、IIIなど、
A、B、Cといってみたり、AAとしてみたり。
ディーラーは色々な表現方法で売買を行っていたそうです。
これらは統一されておらず、あいまいであり、誤解を引き起こしていました。
 
 
山田さん  「うちのところに、Aカラーのダイアが入ったのですが。」
スミスさん 「ふむふむ、それは、0カラーのダイアのことですか?」
 
山田さん  「うーん……そうだと思います。」
スミスさん 「かしこまりました。それでは、現金を用意してまいりますので、ご用意しておいて頂けますか?」
 
それから数日後。
山田さんの店内を訪れたスミスさん。
 
山田さん  「これはこれは、スミスさん。こちらが0カラーのダイアです。」
 
0カラーのダイアモンドを見るスミスさん。
 
スミスさん 「いやいやいやいや、これ違いますよね? 1カラーのダイアじゃないですか。」
 
山田さん  「いえ、当社では、こちらがAカラーでございます。」
スミスさん 「もしかして、その上のカラーあるんすか?」
 
山田さん  「ええ、AAカラーのものがございますが。」
スミスさん 「(ほっ)それでは、AAカラーのものを拝見出来ますでしょうか?」
 
山田さん  「かしこまりました。それではお持ち致しますので、しばらくお待ちください。」
 
店内の奥へ消えていった山田さんは、数分後ダイアモンドを持って現れる。
 
スミスさん 「これはちょっと…。確かに色はイメージしていたものですが、
       10ctはありますよね? 先ほどのダイアの大きさで0カラーのものはありませんか?」
 
山田さん  「現在はないですね。」
スミスさん 「困りましたね…。興味のあるお客さんと話をつけてしまったのですが…。」
 
山田さん  「そんなこと言われても…。」
スミスさん 「ですよね。」
 
 
GIAがカラーグレーディングのシステムを開発する前は、こんなやりとりがあったかもしれません。
これでは困りますよね?
 
というわけで、以前にあったシステムとは全く異なる表記をしたかったわけで、Dから始まっているのです。
依然として他のカラーグレーディングシステムを使っているところはあるのですが、
世界で多くの人に使われているのは、GIAのこのカラーグレーディングシステムだと思います。
さて、次回はお待ちかねの、ファンシーカラーのダイアモンドについて解説いたします!
ブルーダイアやピンクダイアなどなど、色のついたダイアモンドについての解説をしてまいりたいと思います。
 
乞うご期待ください!
Alex iwase